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山の神

今日は、久しぶりに今シーズン初の渓流に出かけました。川の様子や魚や虫の様子も気になりますが、ギョウジャニンニクの生育状況を確認しに、ひとりリサーチでした。

11時になると、気温も上がり、虫たちの動きが活発になってきました。流れは雪解けの増水で、水は澄んでいるのですが川を渡るにはちょっと危ないほどの水量でした。魚がたまるプールをしばらく観察していると、プールの開きで何匹かの大きなニジマスが並んで追いかけっこをしているので、産卵の準備のようでした。ちょっと遊びで手を出したくなりましたが、自分の首を絞めるので、産卵魚たちはそっとしておきます。12時になるとマエグロが続々と流れているのですが、ライズは一回だけで、狙ってみるも反応なし。気まぐれな魚だったよう。

 

 

昨年ここを歩いたときに、ギョウジャニンニクが畑のように群生していて、来年は早いうちにここに来ようと企み、今日、車を止めて藪を漕いで、30分ほど山に分け入りました。

私の足音に気づいて逃げていく鹿のお尻を見ながら、やっぱり先に気づかれてしまうなぁと思いながら、リュックを置いて、ギョウジャニンニクを採り始めました。1時間ほど夢中になって採っていたら、すぐ近くから黒い物体がのそっと動きました。黒く丸い影は、ヒグマでした。

ヒグマとの距離は50mほどで、息が詰まる距離でした。頭や首の周りが茶色い金色の毛の大きな大人のヒグマでした。向こうは私の方に気が付いて逃げ出して、茂みの方へ去っていったのですが、少し先で止まってこちらを伺っていました。

 

腰のベルトに付けてあるクマスプレーをホルダーから出して、いつでも噴射できるように準備。ヒグマがいた場所の周りにもギョウジャニンニクがたくさん生えているので、採りに行きたい気持ちとヒグマがどうしてそこにいたのかも気になりましたが、ゆっくり前を向いたまま後ずさり。ヒグマはゆっくりとこちらに興味を示しながら、ついてきます。襲いかかってくるというよりは、鼻をクンクンと動かしながら、こちらの様子を伺いながら近づいてくる感じでした。

 

リュックまで戻ればカメラがあるので、少し急ぎ足でリュックまで戻るとヒグマの姿が見えなくなっていました。

足元にクマスプレーを置いて、リュックからカメラを取り出し。ヒグマを見失ってしまい、写真が撮れなくて少し残念で、ヒグマに近づこうかという悪魔のささやき。少し考えて立っていたら、ヒグマが茂みの向こうから再び現れました。

 

普通は人間に気づかれると一目散に逃げていくのが正常なヒグマなのですが、このヒグマは人間の存在をわかっていながらも、近づいてくる。このチャンスに、カメラを構え、オートフォーカスが手前の枝にピントを合わせたりし、手動でピントを合わせるとヒグマの毛並み、鼻の動きまでよく見ることができました。

 

写真を撮りながらも、ゆっくりとこちらに近づいてくるヒグマ。その様子はとてもリラックスしている雰囲気で餌を探しつつ、こちらの様子も気になりつつという感じで、あまり恐怖や攻撃、威嚇といった様子ではなかったので、私もじっと静かに近づいてくるヒグマに、とてもドキドキしながらも落ち着いてシャッターを切っていました。

 

なんとなく、こちらに気づかないまま近づいてきているようなので、私も立ち上がって、体を動かし、こちらの気配を送ると、気にしながらもヒグマは背中を向けてゆっくりと茂みに入って行きました。

 

15分ほど、ヒグマと一緒の時間でしたが、茂みの中で、何も逃げ場がない場所で、ヒグマと一対一で向かい合えたのは、久しぶりで、ドキドキしました。鹿撃ちや釣りでも山にいる時間は長く、いつもヒグマの存在は近くに感じるのですが、改めて目を合わせてみると、さすが威厳の大きさは山の神さま、ドシンとパンチを食らったようでした。

 

帰り道、タンチョウが一羽。トウモロコシ畑にいました。メスはどこかで卵を温めているのでしょうか?

 

帰って早速ギョウジャニンニクを軽く茹でて辛味を飛ばし、醤油に付けて瓶に詰めました。そして、ヒグマギョウジャニンニク醤油漬けとラベルを書きました。これはなかなかいい味になりそうですね。