2022年の冬の話のつづき。
エゾフクロウは生態系の頂点に立つ猛禽類。そしてエゾモモンガにとってエゾフクロウは天敵で、雪が深くなる季節、雪の下に隠れてしまうネズミはエゾフクロウにとってはなかなか獲ることが難しくなる。その代わりとしてエゾモモンガは地上生活なので、雪が多くなる季節はエゾフクロウにとっては格好の餌となり、エゾモモンガはエゾフクロウの冬の貴重な食料になっているのだと思う。
食物連鎖と生態系のバランスは、針葉樹、広葉樹、植林樹種など、森林の質や年齢から始まって、草食動物が積極的に餌にする樹木の種や花芽の多い年、少ない年によって変わり、昆虫や小動物の多い少ないによって、肉食動物の動きも変わってくる。
エゾモモンガは、冬の主食はハルニレの冬芽、花芽。そしてケヤマハンノキやハンノキの雄花の多い少ないで行動が読め、写真撮影も面白くも、いまいちにもなる。春から秋は繁殖時期や単独生活もあり、穴が開いた朽木など、エゾモモンガに都合がよい樹洞が多いことなど、エゾモモンガが増える条件になる。
可愛らしいエゾモモンガの写真の裏には、その可愛らしさを上手く一枚の写真に納めたカメラマンの技術や努力もあるかもしれないけど、いろいろな条件がそろって、そのタイミングにうまく巡り合うことがきた偶然で、そんな一枚の写真を可能にさせてくれた自然こそが奇跡。そんな奇跡に出会うことに確率を上げて、精度を上げることができるかは、自然を知ること、観察すること。そして、毎日通うことがとても重要になると思う。
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たった一羽のエゾフクロウの襲来によって、生活リズムを変えたエゾモモンガが現れた。通常のエゾモモンガの生活リズムは、夜明け前に巣穴を出て、近くの木で食事を済ませ日の出までには巣穴に戻る。それが、夜行性のエゾフクロウに狙われエゾモモンガが考えた策が、夜行性をやめて昼行性(明るい時間に活動する)という生活リズムに変わったのだった。
全てのエゾモモンガが昼行性になったのではなく、おそらく数匹のエゾモモンガが夜に食事ができないことで、昼の明るい時間に空腹と寒さに耐えられず、太陽が出ている日中に巣穴を離れ木に飛んで食事を始めたことがきっかけだったのだと思う。その1匹のエゾモモンガにつられるように、他のエゾモモンガも明るい時間に巣穴からでて、餌を食べるようになったのだと思う。
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今まで、夕暮れと早朝の薄暗い時間、10分でも明るければというギリギリの明るさでの撮影と観察がエゾモモンガの普通、通常営業だったのに、もしエゾモモンガが明るい時間に活動してくれたら、写真を撮ることがどれだけ楽に、簡単になるか。そして、あの小さくて素早い滑空シーンも明かるさえ味方につけば、と何度思ったことか、、、
この冬のビッグイベントは、この一羽のエゾフクロウから始まった。
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これまで苦戦していた、滑空シーンを撮影することも、明るささえ味方につけば、カメラやレンズの性能を全てカバーしてくれる。そして、何よりも毎日エゾモモンガを観察しているので、どこから木に登れば、どの枝から滑空し、どこに着地するか、食事をする時間も1時間から1時間半で、エゾモモンガは満腹になるので、満腹になり次第巣穴に向かって滑空する。そんな一連の行動さえわかれば、早めに先回りして、カメラを構える。それを何度も何度も繰り返すことができれば、少し満足いく写真も撮ることができた。
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エゾモモンガの観察を続けていると、エゾモモンガの美しさって、指先が痛いほど冷たいなかで我慢しながら押すカメラのシャッターとか、凍つく寒さの中、巣穴の前で待って、待って体がカチコチに冷たくなったころに、巣穴から顔を出した瞬間の感動やもう少し写真を撮りたいのに、穴に入ってしまったり、暗闇の中に飛び去ってしまう。写真もブレブレ、なかなかうまく撮れないのがエゾモモンガなのに、こうやって朝も昼も活動して、青空をバックに写真が撮れてしまう、なんか違う、エゾモモンガらしくない。。稀に見る偶然の賜物なのだけど、やっぱり暗さや寒さがあってのエゾモモンガなのだと思いつつ、、、
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それでも、これもまた自然で、こんな奇跡的なことがまた来年も起こるとは誰にも予測ができない。そう考えると、撮れる時にとっておこうと、毎日飽きずに通って、エゾモモンガを見続けた。
そんな、エゾモモンガとエゾフクロウの冬の暮らしは、3月の濃い霧が立ち込めるようになると、彼らも恋の季節、繁殖行動によって奇跡のような時間は消えた。それでよいと思った。
このままエゾモモンガが、昼の活動に行動を変えてしまったらどうなることかと思ったけど、やっぱり自然は長い時間をかけてそうなったのであって、いい時期、奇跡的な時間は長続きするものではない。なにも変わらず、いつものままの状態が何よりで、一番いい。
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森の中にキバシリのさえずりが響き、キツツキの木を連打するドラミング。水の流れる音や、福寿草の蕾が膨らむ。光の強さ、全て春の足音。そんな季節の移ろいに安心感を覚え、また次の楽しみがやってくる。
毎日毎日、フィールドによく通い、自然を観察していた。写真を撮るというよりも、次から次にやって来る自然の姿や動物たちに「写真を撮れ」と言われているように、夢中になってシャッターも押した。すごい冬だった。楽しい冬だった。
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3月下旬、ハンノキの雄花も長く伸び始め、赤茶色に色づき開花が近くなった。エゾモモンガも伸びきったハンノキの雄花を食べる姿はなんとなく、えげつない。でも、お目々をハート型にして、こちらを見つめられたらやっぱり写真を撮ってしまう。こんな季節もまた次の冬まで見納めかと思えば、それもよし。この可愛らしさは、また半年間はおあずけです。
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ロッジラッキーフィールドでは、十勝周辺の平野部から山奥の山岳地帯へとエゾモモンガを始め、シマエナガ、エゾフクロウやキツツキ、猛禽類などお客様の興味に合わせたガイドを行なっております。1名もしくは1グループ限定の完全プライベートのガイドを行なっているため、お客様のご要望や体力に合わせてガイド内容を組み立てることができます。興味に合わせて満足するまで時間をお使いください。また冬道の運転が不安な方のために、帯広空港までお迎え、ガイド終了後にお送りしますので、レンタカーを借りなくても大丈夫です。2022年は11月と12月はまだ若干の空きがございます。
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