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エゾモモンガの滑空シーン

地上から1mほどの高さにある巣穴に暮らしている2匹のエゾモモンガの観察を続けています。1月末から2月上旬。夜明けの時間は現地に6時到着。マイナス20度前後の朝の空気はキンとしていて、厚手の手袋をしていても、カメラを持つ指先は針で刺されるようにいたくなり、ポケットのカイロに右手、左手と交互に休ませながら、目の前のモモンガの一瞬の行動に集中しながら観察します。たった30分ほどの夜明けのチャンスですが、ハルニレの枝先で食事をしているエゾモモンガが鳥に驚いて下に降りてきたり、動いたと思ったら一気に巣穴へと滑空して、目が離せないひとときです。

 

毎日のように、巣穴へ通ううちに50センチほどの積雪の森には私のモモンガロードが出来上がりました。踏み固められて長靴でも、上を見ながら歩けるくらい締まった道はなかなかです。

 

エゾモモンガが冬に利用する巣穴は、巣穴の形状もありますが、餌になる木にできるだけ近いというのが条件のようです。今年はハンノキの雄花が不作のようで、エゾモモンガの餌はもっぱらハルニレの花芽。そのハルニレも森の中にはあちこちにある木なのですが、エゾモモンガの好みがあるようで、他の巣穴のモモンガたちも毎回同じハルニレに集まります。なので、夜明けはいつものハルニレを探すと枝先に何匹かのエゾモモンガを見つけることができ、夕暮れは巣穴から出てきたエゾモモンガが目指す先は、いつものハルニレへ滑空していきます。暗さのなかで、枝の先にいるエゾモモンガ見つけるのは慣れないと難しいですが、慣れてくるとどれくらいの明るさになると見えてくるのか、どんなところにどうやって見えるのか、など見つけられるようになるものです。

 

巣穴の場所と餌になるハルニレの木がわかり、エゾモモンガを見つけることができると、エゾモモンガの行動パターンが見えてきます。動くタイミングと滑空するための踏み切る場所、着地(着木というのか?)する場所も、なんとなく、見えてくるのです。そうすると、なんとか、あの滑空シーンを写真に収めてみたいと欲がでるのです。

 

滑空は、夜明けの場合は、巣穴へと戻る1匹1回のチャンス。夕暮れの場合は巣穴のある木から餌場へと向かう、1匹1回のチャンス。そのときの明るでシャッタースピードが決まりますし、ちょっと目を離した隙に飛び終わっていたり、予測していたコースと違っていたり。エゾモモンガの小ささと、夕暮れ、もしくは夜明けという暗さ。そしてカメラやレンズの性能。プラス行動パターンを予測して。といういろいろなハードルの高さを感じます。でも、このまん丸で可愛らしい姿のエゾモモンガが一瞬にして姿を変えて空を飛ぶ姿は滑稽で見事なものです。

 

最初にチャレンジしたのは、カメラを連写にして、ピントはどこに合わせるか迷いましたが、エゾモモンガに合わせて飛ぶ瞬間にあわせてカメラを振る。でした。

 

数打ちゃ当たる的に、カメラの性能任せでこんな感じですが、実際に肉眼で見る姿はもっともっと鮮明で刺激的?です。

 

滑空シーンを写真に収めようと思うと、カメラの設定を連写にしたり、ISOを上げたり、絞りも変えたりで、枝に乗って止まったエゾモモンガを撮るのとは設定が違うので、エゾモモンガの動きをみて、どっちを撮るか、悩みます。明るさと暗さは5分ごとに変わるので、枝に乗った可愛いシーンを撮りたいと思ってカメラの設定をいじっている瞬間に滑空してしまったり。とにかにワンチャンスしかないといっていいので、この明るさなら綺麗に撮れる。でも飛ぶかもしれない。設定をモタモタしている時間もなく。夜明けはすぐに朝になり、夕暮れはすぐに夜になってしまいます。

 

 

そして、フレームアウトでした。

 

着地点がわかっているので、着地点の近くでカメラを構えて息を殺してまっていると、エゾモモンガも私の姿に気づかないのか、シューッっと音をたてて飛んできます。野球のグローブがあれば、超高速変化球をキャッチできるかもしれません。そんなトライ&エラーのモモンガと寒さと暗さの楽しみですが、最近はカメラの限界も感じつつ、あのカメラがあれば、あのレンズだったら(魔の囁き)、なんて悩みます。いやいや、そんなことはない!

 

全ては太陽の力、「暗さ」そして、エゾモモンガが「夜行性」というのが、一番の難題。ただ、夕暮れも夜明けも10分違うだけで、まったく明るさが違うので、その10分にかけて足蹴なく通うしかないという、結論(いい聞かせて)。

 

カメラのピントもエゾモモンガに合わせるのではなく、ピントをマニュアルで固定して、いわゆる「置きピン」で撮ってみたほうがいのかなと思い、今朝はエゾモモンガがここを通過する瞬間だけを狙うと決めて、巣穴のある木の近くに「置きピン」で待つ。

 

夜明け、ハルニレの枝にいるエゾモモンガを確認し、日の出の位置を確認して、コースを予測して、カメラをセット、ピントを固定。まだ「飛ぶなよ〜」と心の中で念じながら少しでも明るくなるのを待ちます。寒さで指先は痛いのに、ハルニレの枝先にとまったエゾモモンガに超集中。笑 

 

 

そして、2匹目!

ここまでが2月10日の今朝までの自主練習でした。

 

エゾモモンガが昼に活動してくれたら、また写真撮影もフラッシュや照明を使って撮ったら簡単に撮れるんだろうなぁと思いますが、空を見上げて明るさと暗さに願ったり、もっとい性能のカメラやレンガがあったらなぁという気持ちもまたいいもので、なによりもエゾモモンガや鳥や草花の暮らしに入り込みたいので少しでも邪魔にならないように、と思います。まだまだ春まで、だんだん早起きが辛くなってきますが、繁殖シーズンもはじまり、日中に飛び交う日も楽しみですね。まだまだ修行あるのみですよ。

 

エゾモモンガの暮らしを一緒に観にいきませんか?撮影や観察のガイドの空きはこちらで確認いただけます。それでは、おやすみなさい。