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before rain

十勝川のイトウ釣りにチャレンジしたのは、かれこれ6年前。十勝川のイトウは簡単ではない。地元に住んでいてもなかなか出会えないのが十勝川の本流のイトウですが、釣れると90センチ、1mオーバーも毎年必ず、4、5匹は釣れている。そんな十勝川のイトウにチャレンジできるのは、11月から3月の真冬の季節、川の水位が一番減る季節がチャンス。ただ、広大な十勝川本流、どこにイトウが潜むプールがあるか、1mオーバーのイトウが潜んでいるプールを知っていても、なかなかイトウがその気にならない限り釣れないのが十勝川の難しさ。だから地元のイトウ釣り師は竿を振れればそれだけでいい、でももしかしたら、、、で10日連続ボウズも当たり前で本流のイトウを狙う。前線の通過、夜の気温、低気圧、積雪、ダムの放流、水位。そして最後は直感にかけて竿を振りつづける。

 

今回のチャレンジは6年前から十勝川のイトウにチャレンジしているドイツ人のAさん。1匹釣れる釣りが好きで、可能性さえあれば1日中、何も食べず、なにも飲まずに竿を振り続ける。過去には、北海道で102cmのイトウを釣ったのも彼のそんな、ただ黙って投げ続ける性格だったからかも。今年も3日間で十勝川のイトウにチャレンジすることになった。

 

今年は3月にはいって、まとまった雪が降ったので、川までのアクセスはスノーシューか幅広のスキーになった。光のさ、午後からはユスリカが飛び回り、3月らしい暖かく冬を忘れる釣りになった。

 

1日目は、2箇所に的を絞った。午前中に3流しを終え、2つ目のプールにたどり着くと、さすが土曜日だけあって先客がいた。挨拶すると大先輩で、いろいろと教えてくれた。結局そのプールは諦めて、もう一度最初のプールに戻ると、別れて30分後に90cmのイトウを釣ったと連絡がきた。もう少し早くあのプールに入っていたら?もしあの時譲ってもらっていたら?などなど考えてしまうけど、それはやっぱり、魚の付き場所、フライの入れ方、タイミングを知っている大先輩だったから上げれた魚だったのだろう。堤防からスノーシューを履いて永遠と歩かなければいけない場所なので、知り合いが3人集まって立派で美しい魚を見て喜んだ。いいなぁと思った。結局、ニアミスで1日目を終えた。

 

2日目は、アメマスをやることになった。川の水位、気温、日の長さ、ここぞというイトウのタイミングなだけに、ここにきてアメマスかぁとも思ったけど、「3日やって1匹も釣れず」というのも酷かと思い、下降のアメマス探しに出かけた。この時期にしてはまだ少し時期が早いだけあって、日曜日でも釣り人は数人、そしてアメマスも群れも極少。水はクリアーなのだけど、やっぱりまだ上流から降りてきていない様子だった。1匹釣れたアメマスはグリーンバックの海から入ってきたような魚だった。あと1週間か?ひと雨で良くなりそうな感じかした。白鳥やマガン、ヒシクイが飛び交う。枝ぶりの良い見晴らしの良い木にはオオワシやオジロワシが飛び、川に浮かぶカモたちや、波の音を聞きながら竿を振る時間は格別だた。

そして最終日。2月にイトウを釣ったプールに入った。雪が深く、堤防までも車で行けない。車からスノーシューを履いて700mほど歩いた。暖かいというよりも暑い。川について一休み、頭の上を白鳥なんども飛んでいく。透明度の高い水、沈んだ流木に流れがぶつかり底が見えないくらい深い。このポイントから出てきてほしい魚が今回の最大の狙いだった。低気圧が近づき、天気も下り坂、風のないボワンとした天気。そして釣り人の足とが全くない。明日からの雨で、この冬の釣りは終了する。そして最終日という、1匹を釣るには完璧のスチュエーションで臨んだ。ものの、、、

 

まったくアタリもかすりもなく。

 

やっぱり、これが十勝川本流のイトウ釣り。そんな甘く、簡単にいく訳が無いのでした。結局、彼はまた来年チャレンジすると宣言して、空港で別れた。彼のただただ黙っていつまでも竿を振り続ける姿は素晴らしい。いつか一緒に大きなイトウを釣り上げたい。6年前にフライフィッシングを始めて、今ではモンゴル、アルゼンチン、ノルウェー、カナダ、キューバなど世界中のビックネームと渡り合う彼の暴走は感心する。また彼との釣りが楽しみだ。

 

そして、彼が帰った次の日は、予想通りの大雨になり、川は濁流の増水。やっぱり釣るのはあのタイミングだったのになぁと、日頃の行いを振り返った。そして、次の釣りのためにタイングに精をだせるいい雨になった。