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-8℃

ついに本格的な寒さでした。最高気温マイナス8℃。これまでマイナス7℃の釣りは経験してましたが、ボートの上でのマイナス8℃の釣りは私も初めてでした。3日間竿を振り続けて、釣れた魚はアメマスが1匹。大きなイトウが足元まで追いかけてきたシーンが一度ありましたが、アメマスたちの動きも鈍く寒さ体験の釣りになりました。

 

マイナス8℃という世界は、地上よりも水中のほうが暖かいので、体についた水しぶきやロッドや糸についた水はすぐに凍ってしまいます。一投ごとに竿を水中に入れて、15秒ほどカウントダウンの間にガイドやロッドの氷を溶かし、ゆっくりとリトリーブを始める。そしてまたキャストしては水中に竿を沈める。防寒手袋をして、足先はカイロや電気靴下で保温。分厚いダウンジャケットを着て、ボートの上で7時間竿を振り続けます。

 

普通はそこまでして釣りをしたいと思いません。できることならハワイやニュージーランドにでも行きたいです。ですが、なぜか一年の締めくくりにこれをしないと一年を終えることができないような気がして、泣き言を言わずにじっと黙って竿を振り続け、最後まで振って一年を終える。そんなストイック?バカな?きちがいな?変態な?でもまだやり続けるでしょう。寒くて、厳しい環境だからこそ、12月の釣りなのかもしれません。

水で濡れたロープは針金のように凍り、リールを濡らすと凍って回らなくなってしまいます。湖面の岸際は氷が迫り、上陸してトイレをすることも大変、風が止んだ朝や夕暮れは水面がうっすらと凍り、キラキラと輝き、音もなく降る雪は真っ黒に澄んだ湖面に吸い込まれるように消え、気温が下がると水中に落ちた雪が凍らずに水面に漂い、波で揺れる薄い布団のように柔らかく揺れる。岸辺の木や草が水面に着く場所には凍りの粒が日々成長を続け輝く。

この三日間は最後の最後にマイナス8℃という、これまでにない寒さの中の釣りになりましたが、風裏に入って、ボートを止めると、風のない世界に、真っ黒な水面に音もなく雪が吸い込まれ行き、視界のない世界は空と水面の境界がなく、投げたフライがどこに飛んでいくのか、なんとも言えない不思議な世界でした。おそらく三途の河が近かったのかもしれません(笑)。とても釣れそうな予感がしたのですが、災害から完璧に立ち直っていないこの湖はまだまだ簡単には微笑んではくれませんでした。そのかわり極上の寒さをプレゼントしてくれたのかもしれません。2週にわたり、南富良野町のログラーチのスタッフの方々、保養センターの体の芯から温まるお風呂には、とても癒していただきました。ありがとうございました。

 

このイトウ釣りのガイドで今シーズンの釣りのガイドが全て終了いたしました。事故も怪我もなく無事に終えることができてよかったです。いい釣りができた日も、なかなか厳しかった日もありましたが、お付き合いいただいたお客様、ゲストの方々には心より感謝いたします。そして、毎日、ロッジの料理や掃除に時間を費やしてくれたN氏、ありがとう。